2009-11-11
シリーズ 「詩のような小説」
町中の蛍
「町中、どこにも蛍がいる方が良い。」
三郎は心の中でつぶやいた。蛍を人工的に増やして沢山の人に来てもらおうという集会で言いたかった言葉だ。でも、彼は言葉を飲み込んだ。
「大きすぎる夢は、人にうらまれる。 大きすぎる夢は、ほっておいても何時か叶う。」
そんな思いからか、自らの夢を語る事は少ない彼だった。集会後、彼はひとり森の川辺を帰った。山中に顧みられず飛ぶ蛍の群れのしずやかさ。
「いつか町が崩壊して野原になる時を待っている蛍なんだろうな。」
蛍にそんな思いをかぶせる三郎だった。
や・ふ
編集長より
「詩のような小説」は、小説をどこまで短くできるかの文学的試みです。詩と小説の違いは長さや形式ではないと思います。小説とは、「ある人生を遠目で俯瞰するもの」との説に賛成します。本日は や・ふ さんの作品からご紹介します。
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